
## A5クリップボードを使いたい
日常的なメモを取るにあたって、A5サイズのクリップボードをつかいたいとおもっています。コンパクトでカバンに気軽に入れられ、書くための面積もじゅうぶんあります。また、A4のコピー用紙を半分に折ってつかえばよいので、コストもほとんどかからず、枚数も実質無制限です。
しかし市販のA5クリップボードを実際につかってみるといくつかの問題に気づきました。たとえば、クリップ部分が大きく、筆記できるスペースが限られてしまったり、クリップ部分が厚くてカバンのなかでかさばったりします。板自体のサイズもA5よりひとまわり大きく、理想的とは言えませんでした。
そこで、3Dプリンタをつかって、クリップボードを自分で作成することにしました。
## 試作が案外に良かった
第一歩として、既存モデルを加工して試作品を作成してみました。
使用したモデル:[Simple A5 notes holder](https://makerworld.com/en/models/405450#profileId-307301)
平らな板状に加工して、市販のダブルクリップで紙を挟むスタイルにしました。

<span class="mxt-caption"> ▲ 屋外作業のお供にしても、まったく問題ありませんでした</span>
この試作品は、市販品に劣らず、むしろ理想に近いものでした。しかし、いくつかの点で改善余地がありました。
- 厚みを減らして、持ち運びやすさを向上させたい
- 板の長辺方向を少し短くしたい
- 角の丸みをもう少し小さくしたい
これらの調整を既存モデルで行うには限界があったため、自分でモデルを設計することにしました。
## OpenSCADでのモデル化
そこで、OpenSCADを使ってクリップボードのモデルを作ることにしました。OpenSCADでは、モデルの各パラメータを簡単に設定でき、さらにカスタマイザで調整することもできます。
以下のようなコードを使って、縦幅、横幅、角の丸み、板の厚さをかんたんに調整できるようにしました。
```openscad
// パラメータの設定
// Height
plate_height = 214; // 縦幅(ミリ)
// Width
plate_width = 156; // 横幅(ミリ)
// Corner Radius
corner_radius = 4; // 丸角の半径(ミリ)
// Thickness
plate_thickness = 2; // 厚さ(ミリ)
// 丸角の板を作成
module rounded_plate(plate_height, plate_width, corner_radius, plate_thickness) {
// 中央の矩形部分
cube([plate_width - 2*corner_radius, plate_height, plate_thickness], center = true);
cube([plate_width, plate_height - 2*corner_radius, plate_thickness], center = true);
// 丸角の部分
translate([-plate_width/2 + corner_radius, -plate_height/2 + corner_radius, 0])
cylinder(h = plate_thickness, r = corner_radius, center = true);
translate([plate_width/2 - corner_radius, -plate_height/2 + corner_radius, 0])
cylinder(h = plate_thickness, r = corner_radius, center = true);
translate([-plate_width/2 + corner_radius, plate_height/2 - corner_radius, 0])
cylinder(h = plate_thickness, r = corner_radius, center = true);
translate([plate_width/2 - corner_radius, plate_height/2 - corner_radius, 0])
cylinder(h = plate_thickness, r = corner_radius, center = true);
}
// 板の呼び出し
rounded_plate(plate_height, plate_width, corner_radius, plate_thickness);
```
このコードをOpenSCADで実行すると、各パラメータを簡単に調整できるため、好みに応じた形状やサイズを手軽に作成することができます。特に、角の丸みや板の厚さを微調整することで、各自の好みや用途に応じ、筆記のしやすさと持ち運びの快適さを両立させることが可能です。

## おわりに
今回のクリップボード作成で、3Dプリンタの可能性をあらためて実感しました。市販品では得られない、完全に自分のニーズに合ったアイテムを手軽に作成できる点は、3Dプリントの大きな魅力です。
特に、OpenSCADでは、サイズや形状を自由にカスタマイズできるのは非常に便利です。クリップボードの厚みや丸角の半径など、細かな調整ができたことで、実用性とデザイン性のバランスが取れた小道具をつくれました。

<span class="mxt-caption"> ▲ 微妙すぎて写真ではわかりにくいですが、余白が絶妙となり、重さが20%減</span>
### 環境
- **3Dプリンタ:** Bambu P1P
A5サイズの板もプリントできます。
- **フィラメント:** eSun PLA+
使いやすく、お手頃価格のフィラメント。
- **ソフトウェア:** OpenSCAD version 2021.01
パラメトリックデザインを効率よく行える強力なツールです。
- **スライサー:** Bambu Studio 1.9.3.50
簡単な操作で高精度のスライス&プリントが可能でした。
- **コンピュータ:** MacBook Pro (14-inch, 2021) with macOS Sonoma14.5(23F79)
### 参考リンク
- **OpenSCAD公式サイト:** [OpenSCAD](https://www.openscad.org/)
OpenSCADのダウンロードやドキュメントを参照できる公式サイトです。
- **MakerWorld:** [MakerWorld](https://makerworld.com/en)
さまざまな3Dプリントモデルが共有されているサイトで、他のユーザーが作成したモデルも参考にできます。
- **OpenSCAD Tutorials:** [OpenSCADチュートリアル](https://openscad-tutorials.gitlab.io/)
OpenSCADを学ぶためのチュートリアルが掲載されたサイトです。基本から応用まで幅広い知識を得られます。
- **OpenSCAD 入門記事:** [キーキャップ設計による OpenSCAD 入門](https://qiita.com/zk_phi/items/ab99315ebaef66e84aa0)
ぼくはこの記事がとても入りやすかったです。
- [A5クリップボード、セルフプリントのススメ - Qiita](https://qiita.com/hann-solo/items/9141ce74e5b4d388d9bb)
微アレンジ版をQiitaに書きました。